販売店取材トロフィーモーターサイクル

トロフィーモーターサイクル 八木沼 務 代表(福島県田村郡)【販売店取材】

公開日: 2021/08/30

更新日: 2021/09/10

トロフィーモーターサイクル 八木沼 務 代表


「個性的」という表現がしっくりくる人がいる。八木沼代表もその一人。原点はバイクショップ巡りの旅。そこから販売店勤務なくして二輪販売店を開業。移転を繰り返しつつ現在は、業歴約20年にして数百名の管理顧客を抱える一国一城の主となった。コミュニケーションの重要性を第一に掲げる八木沼代表に、その真意について聞いた。

この道に入るキッカケとなったのは「バイクショップ巡り」

海外のショップのような雰囲気のお店

 磐越自動車道郡山東インターからクルマで10分。ワインディングロードを抜けると、2階建ての建物が見えてくる。トロフィーモーターサイクル(福島県田村郡三春町、八木沼 務代表、以下トロフィー)だ。

 外壁にはアルファベットで「TROPHY」とタテにペイントされており、その横には「MOTOR CYCLE」「SALES & SERVICE」と記されている。海外のショップのような表現だ。

 店内に足を踏み入れると、八木沼社長と奥様の智子さんが笑顔で迎え入れてくれた。店頭と店内にはハーレーを中心としたカスタム車両が並ぶ。その多くはユーザーからの預かり車両だという。

 建物は1970年代に建てられたという倉庫。2年前に移転した際、外壁を塗り替え内装にも大きく手を加えた。店内には接客カウンターが設置されており、意図的にやや照明を落としている。カフェバーやプールバーの趣だ。コンセプトは「バイクショップっぽくないバイクショップ」だという。

 八木沼代表がこの道に入るキッカケとなったのは「バイクショップ巡り」。いまから20数年前、ヤマハのXS650で九州・四国をツーリングし、バイクショップを巡ったのだという。八木沼代表は、これについて当時を述懐する。

「雑誌を見てカッコいいと思うバイクショップを数十店選び、すべて訪問しました。やはりカッコいいことをやっているショップは、お店の外観はもちろん、ディスプレイや商談スペースから、強いこだわりが感じられるのです。ウチはその影響を受けています」

 すぐに店をオープンしたわけではなく、最初は友人のバイクを預かり修理していたという。そうこうするうちに、郡山市内にある"複合ショップ"から声が掛かった。一つの建物のなかに複数の店舗が集まっているところへの、いわゆるテナント出店だ。そこはカーショップやアパレルショップ、バー、タトゥショップなどが集まった、ややアウトロー的な雰囲気のある複合店だったという。

「私が入店したのは15年ほど前ですが、そこではいまのようにハーレーは扱ってませんでした。XS650やW650、古めのオフ車などです。ただ、それぞれが違う商売を営んでいるため、売れる売れないが原因で妬みやひがみがあり、難しい側面もありました。結局、そこでは2年間営業を続けました」

 その後、郡山市田村町に移転した。店舗は国道49号線沿線だったため、来店客は想定以上に多かったという。交通量も来店者数も多く、常に店は賑わっている状態だった。ただ、中には常識を知らないユーザーもいた。営業時間外の夜10時頃、シャッターを閉めているにも関わらず平気で店を訪れるユーザーが増え、近隣住民に迷惑を掛けるようになってしまったのだという。また、店舗面積も狭く、ユーザーの預かり車両を置くスペースも限られていたことが、移転のキッカケとなった。

「4年前に移転しました。ご覧の通り、この場所は市内とは打って変わった場所にあるため、常連に占拠されることもなく、また近隣に迷惑をかけずに仕事ができます」

 こう聞くと、管理顧客数は減ったのではないかと思えるが、それはないという。なぜか。そこには八木沼代表の、労をいとわぬユーザーサービスがあった。例えばユーザーから整備やカスタムで預かった車両について、その持ち主から、「明日の土曜日、ツーリングに行くので今日、納車してほしい」との連絡があったとする。しかもそのユーザーの帰宅時間は夜の9時半。そうなると、納車は確実なところで10時以降となる。であったとしても、それを全くいとわないのだ。

「私にとってはごく当たり前のことなんです。車検だから取りに来て欲しい、と言われれば、夜の10時でも11時でも取りに行きます。どんなに遠くても必ず伺います。正直、疲れます(笑)。でも、ウチのお客さんは、普段、仕事が忙しく、あまりバイクに乗る時間を取れない人が多いんです。それだけに融通をきかせてあげたいのです」

希望車を聞き必要に応じ適切なアドバイスを。これが八木沼流

独特の雰囲気が漂うトロフィー店内

 トロフィーのユーザーには自営業者が多い。かといってオートバイは高所得者だけを狙ったラインアップというわけではなく、ちょっと頑張れば手が届くラインで設定している。この微妙なプライス設定がポイントだと八木沼代表。ここを外れると、ユーザー層が変わる。このことは、過去の経験から理解しているのだ。平均単価100万円。ここがボーダーラインだという。

 トロフィーでは、ユーザーの希望車両を聞いても、すぐにそれを探すことはない。詳しく話を聞いたうえで本当にその車両がそのお客さんに相応しいかどうかについて、必要に応じてアドバイスするのが八木沼流。よくあるのが、見た目はカッコいいけど、乗りづらさがある場合。そんな時はまず、その車両のマイナスポイントを説明し、さらにはそのユーザーの友達が乗っているオートバイについても確認する。その理由は、一緒にツーリングに行った時、バランスのいいペースで走れるかどうかを判断するため。そして八木沼代表が気になることがあれば、それを正直に話す。すると、何がおすすめかについて聞いてくる。その時には具体な車名を挙げて提案するのだという。

「先日、SR400を探しているというTW200に乗った若いお客さんが来店しました。YouTubeでSRベースのカフェレーサーを見て、カッコいいなと思ったようなのです。だから、SRに拘っているわけではなかった。コロナ前だったら、30万円以内で作ってあげるよ、と言えたけど、今だと相場が上がっているので60万円でも難しい。その金額を出すのなら、大型でいいバイクを探すこともできるので、大型免許を取り選択肢を広げたうえで考えてみたらどうですか、という話をしました。すると本人は真剣に調べたようで、CB1100にします、と言ってきました。いま、車両を探しているところです」

 八木沼代表のアドバイスにより、ユーザーの考えが変わり、それが結果的に満足度を高めることになるのだ。こんなケースもある。

「雑誌広告に掲載されている、100万円ぐらいのマグナ250のフルカスタムを指さし、これが欲しい。と言ってきたお客さんがいました。見たところ、これで100万はどうかと思ったので、それを正直に伝えると、数日後、大型免許を取りスポーツスターに乗りたい、と考えが変わりました。100万円でおつりがくるオートバイですからね」

 利益だけを追求するのであれば、こうした対応はしないだろう。その時、八木沼代表が真っ先に考えるのは、お客さんとの信頼関係。ユーザーに同氏の考えを説明し、そこで納得が得られれば、対応する。ユーザーに少しでも長く乗ってもらうためには、信頼関係なくしては成り立たない、と強調する。

 一度、こうした関係性が確立されるとユーザーは八木沼代表に全幅の信頼を置き、話を聞く耳をしっかりと持つようになる。それが結果的に代替えに繋がるのだという。

完全に区切られたサービススペース。ここには“現在進行系”の車両が数台並ぶ

 同店のユーザーの平均年齢はバラバラ。コア層は30〜40代前半で、それに50代、60代が続く。30〜40代が中心ということは、顧客の平均年齢としては、かなり若い部類に入る。ただ、20代になると減少する。将来のことを考えると、若いユーザーはさらに増やしていかなければならない。その一策として行っているのは、年配者と若年者に対する対応の差別化だ。

「年配の方は、経済力もあるので、単価の高い車両を購入されることが多い。いい仕事をし、その分、相応の利益も確保させて頂きます。でも若いお客さんに対しては、利益を削りギリギリのところで提供しています。頑張って乗ってもらえるなら、頑張るからってね(笑)」

 こうすることで若いユーザーの定着率が高まれば、彼らが次代を担う顧客となってくれる。また、そこから多くの紹介も生まれる。ある種の先行投資と言えるだろう。

 トロフィーでの売れ筋は5〜6割がハーレーでそれに次ぐのがW650、YZF‐R25、GSX‐S1000Fなど。あとはNinja250やハーレー以外の外車ではトライアンフのボンネビルシリーズなどは高人気だという。

 既存ユーザーからの紹介が多いのもトロフィーの特徴。とりわけ初心者の紹介を受けることが多いという。彼らに対しては、超がつくほど懇切丁寧な説明・対応をしている。

「つい必要ないところまで説明しちゃうんです。例えば、オートバイの保管の仕方。バッテリーが上がらないようにするための方法とか、初心者がやりがちな、故障に繋がる操作ミスなどについて説明し、トラブルは些細なところから発生することをお話しします。先日、こんなことがありました。あるお客さんから、『ギヤがニュートラルに入らない』と電話がありました。そこで、1速まで下げる方法から教えたら、すんなり入った。こういう問い合わせが日常茶飯事なのです」

 トロフィーでは、ハーレーユーザーが過半を占めていることから、カスタム需要は高い。ライトなものからヘビーなものまで様々だが、彼らの8割がカスタムして楽しむ。定番はマフラーやハンドル。交換パーツはトロフィー経由でのオーダーはもちろん、持ち込みも認めている。

「新規のお客さんの持ち込みは、その人の人となりが分からないので歓迎しませんが、付き合いのあるお客さんだと必ず事前に相談があるので問題はありません。そのため、極端に安いモノを買うこともなく取り付けることができるのです」

 ただ、基本は同店で車両を購入したユーザーの作業が最優先。そこを譲ることはない。

家族ぐるみでイベントを楽しむ。これを常に意識している。

トロフィー主催の芋煮会ツーリング。毎年これを楽しみにしているユーザーはとても多い

 イベントにも力を入れている。ただ、それはユーザーのツーリング志向を考慮したうえでのもの。走りを楽しみたいという人は少なく、参加者が連なって走るのを新鮮に感じる、そんなユーザーが多いという。そのため、走りやすさや風光明媚な景勝、そして美味しい食事、この3つを主体に組み立てている。評判がいいのは「芋煮会ツーリング」。ツーリングを終えた後、集合場所で芋煮を作り、みんなで食べるというものだ。家族ぐるみで楽しめるところがポイントだという。

「お客さんの家族に目的地に先に入ってもらい、料理を作って頂くのです。そこに私たちが到着したら全員で手伝い、でき上がったらみんなで頂きます。その後は、たとえばそこにバスケットコートがあったとしたら、フリースロー対決をやったり、あるいはビンゴ大会を楽しんだりします。景品も用意するので、子供を含めみんなで楽しめるイベントになるんです」

 また、この自店イベントとは別に、「マルシェ」というイベントにも参加している。これは複数の飲食店がケータリングサービスを行う地域イベント。行政からトロフィーに出店依頼があり、参加するようになった。同店のユーザーからすれば、ここがツーリングの目的地となる。毎回、ユーザーの家族を含め80名ほどが参加する。オートバイだけでも50台を超えるという。

 かなり大規模なイベントのため、毎年、このイベントと前出の芋煮会ツーリング、これを2大ツーリングとして多くのユーザーが楽しんでいるという。基本的なことではあるが、こうした、ユーザーを「遊ばせ楽しませる」ことが、長く顧客でいてもらうための秘訣なのだろう。いつの時代もこの辺りは不変なのだ。

 八木沼代表は興味深いことを語っていた。それは「ノーマルの良さが分かる価値観」の醸成だ。

「オートバイってノーマル状態で走った方が楽しいと思える側面もあると思うんです。いまの新車はかなり完成度が高くいじる必要はないレベルにあります。例えば、ヤマハのXSRとか、トライアンフのボンネビルのニューシリーズ、モトグッツィのV7シリーズ、BMWのRnineTとかね。なので、カスタムという方向性に加え、もう一つのコンセプトとしてノーマルライディングを推奨しようと密かに思っています」

 ノーマルがカッコいい。長年、カスタムバイクと向き合ってきたからこそ、できる発想なのだろう。これはまさに新しい価値観の提案といえるだろう。

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