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保有台数、前年比微減ながらも、原二・軽二輪・小型二輪の3クラスでは増加

公開日: 2022/11/01

更新日: 2022/11/01

例えば、ある年の二輪車保有台数が100万台で、その年の二輪車販売台数も100万台だったとする。そして、翌年の保有台数も100万台だった場合、非常にシンプルに考えれば、バイクを買い替えた、または降りた人と新たに乗る人が入れ替わっただけで、バイク人口は1人も増えていないことになる。こんな極端なことは現実には起きないが、保有台数はバイク人口の増減や二輪市場のおおよその動きや流れを知ることのできる指標の一つだと考えられる。

原付二種と小型二輪は10年前から30万台前後増加。軽二輪も200万台をキープ

表1/二輪車保有台数の推移(2013年~2022年/各年3月末の台数)
表1/二輪車保有台数の推移(2013年~2022年/各年3月末の台数)

表1は、2013年から2022年までの10年間における、各クラスの保有台数だ(各年3月末の台数/2022年の原付一種と原付二種は二輪車新聞推計値)。2022年の合計は1025万696台で、前年比0.4%のマイナス。過去10年間をみても、10%を超えるような大幅なマイナスはないにしろ、一度もプラスになった年はない。

しかし、各クラスを見ていくと、マイナスの原因が容易に分かる。最大のボリュームゾーンである原付一種のマイナスが全体に響いているのだ。原付一種の2013年の保有台数は666万1807台だったが、2022年には445万台に減少。わずか10年で実に200万台以上も減っている。さすがに、他のクラスで吸収するにはあまりにも大きすぎる数値だ。

原付一種のマイナスに引っ張られ、全体もマイナスになっているものの、原付一種クラス以外は右肩上がりの傾向を見せている。原付二種と小型二輪クラスにおいては、過去10年間でマイナスとなった年はない。

原付二種クラスを見ると、2013年の保有台数は162万6094台だったが、2022年には193万台。約30万台も増加している。2020年から2021年、2021年から2022年、2年連続して6万台弱増え続けているので、この勢いを維持しつつ、プラスアルファの上乗せができれば、2023年3月末には200万台の大台を超えている可能性もある。

「コロナ禍で、大きく販売台数が増えたのは原付二種。通勤や通学でバスに乗りたくないというような人が免許を取って購入されるケースが相次ぎました。あと、外出頻度が減り、利用する機会が増えたのがフードデリバリー。仕事が減り、収入もダウンしたというお客さんがデリバリー業務を始める際に選ぶのも、原付二種クラスが多かったです。原付二種を超えるクラスを宅配などのデリバリー業務に使用する場合は事業用ナンバーが必要となりますが、原付二種はその必要がない。原付一種のような30㎞/h制限や二段階右折もないですからね」(二輪販売店A)

半導体不足により新車供給は依然停滞。一方、ユーザー数には減少見られず

表2/軽二輪新車販売台数(2022年8月)
表2/軽二輪新車販売台数(2022年8月)

原付二種と同じく、過去10年間、保有台数が増え続けたのが小型二輪。2013年の保有台数が156万6341台だったのに対し、2022年には181万1815台。25万台近くも伸びている。販売店Aのコメントにもあるように、原付二種は通勤・通学の足やデリバリー業務用として利用されることが多々あるが、小型二輪の多くは趣味としてのモノだろう。そういった使われ方の違いがあるにも関わらず、原付二種と遜色のない伸びを見せているのは驚異的ではないだろうか。

軽二輪クラスは年によって多少、台数に前後はあるものの、過去10年間では基本的に右肩上がりの推移を見せている。2021年に保有台数は200万台を突破し、201万4251台となった。今年は2年連続して200万台を突破しただけではなく、さらに上乗せして205万8881台にまで伸びている。

バイクは『密にならない移動手段』として注目され、保有台数も原付一種以外は順調な伸びを見せている。一見、コロナ禍以降の好調さをキープしているようにも思われるが、販売店からは異なる声が聞かれるようになった。

『売りたいバイクを売る』から『売りやすいバイクを売る』にシフト

表3/小型二輪新車販売台数の推移(2022年8月)
表3/小型二輪新車販売台数の推移(2022年8月)

「今年は、2020年や2021年のような勢いは感じないですね。8月以降は、あまり良くないです。Z900RSなどは不動の人気ですが、ほかはそこそこです。コロナで家にいる時間が増え、お金の使い道が変わりましたが、制限がどんどん外れていき、お金の使い道も前に戻った感じがします。簡単に言えば、バイク以外にお金を使うことが増えた。コロナ禍をキッカケに、バイクに乗り始めた人、バイクに再び乗り始めた人が多くいらっしゃいますが、そのうちの3人がすでにバイクを売りに来ました。中には、点検に来て、そのまま売却という方もいました」(二輪販売店B)

「コロナ禍になって3年目ですが、今年が一番良くないですね。供給の遅れは、いまは半導体不足が最大要因。売りたいのに、売るモノがない。在庫の問い合わせはありますが、一人のお客さんが何軒もの店に電話をして探し回っているケースも多い。入荷したバイクをネットに掲載すると、1時間もしないうちに『まだありますか?』と確認の問い合わせがきます。ウチでは通販にも対応していますが、福島や新潟から問い合わせが来るなど、商圏は広がっています。新潟のお客さんは成約になり、ウチまで取りに来ました。去年や一昨年よりは悪いとは言っても、欲している人はいる。それを実感する出来事でした」(二輪販売店C)

8月から良くないという話が出たが、確かに軽二輪クラスの新車販売台数は前年割れしている(全軽自協調べ)。小型二輪の新車販売台数は前年比プラス(同)なのだが、専売化が進んでいる昨今、その恩恵が広く行き渡っていないものと思われる。タイホンダでは、半導体不足が解消された、との報道もあったが、正常化が実感できるようになるには、タイムラグがあるものと思われる。

レンタルやタマ数豊富な車種の取り扱い。モノがないなら『提案力』で差別化図る

二輪保有台数実績
二輪保有台数実績

モノがない。そういう声はほかの販売店からも聞こえてくる。

「ウチでも、今年は前年比でややマイナスですが、お客さん自体が大きく減っているわけではありません。教習所は今も150%ぐらいの混み具合という話もありますし、問い合わせや来店数も目に見えて減ってはいません。ただ、軽二輪クラスは新車のモノがない状態が続いています。ホンダとスズキは少しずつ入るようになってきましたが、ヤマハがまだ遅れている。ウチではレンタルもやっていますが、そちらは好調です。特に今人気なのは、モンキーやエイプなどギア付きの50cc。友だち数人でやってきて、プチツーリングを楽しんでいます。だから、バイク人気が下火になったというよりは、売るモノがないから実績が落ちているという感じですね。モノがあれば販売実績は全然違っていると思います」(二輪販売店D)

生産と供給に関しては、販売店の努力でどうにかなるものではないので何ともし難いが、バイクに向けられていた目が違う方向に向いてしまったということでもない。そのことは、販売店の声からも伺い知ることができる。 販売や接客には『提案力』が重要であることは間違いない。ここで『提案力』の一例と言える話を紹介する。

「ウチは中古専門店ですが、中古でも人気車種はなかなか手に入りにくいですね。でも、モノがないのは、どのショップも同じ。どこかに潤沢にあって、ウチだけにないということではありません。ウチでは人気モデルもできるだけ揃えておこうと思っていますが、タマ数が豊富なモデルも積極的に取り扱っています。人気モデルは店にあれば自然に売れますが、モノがなくてはどうにもならないですからね。タマ数の豊富なモデルなら仕入れもしやすいし、価格もお求めやすい設定にできる。『売りたいバイクを売る』から『売りやすいバイクを売る』へのシフトですね。車種ですか? それはちょっと秘密です(笑)」(二輪販売店A)

バイク人気のトーンダウンは、今年になってからたびたび耳にするようになったが、それをそのままにせず、「では、どうするか」を考え実行する。その大切さを販売店Aに改めて教えられた。

そして、複数の販売店も言っていたように、ユーザー自体がいなくなっているわけではない。見られていないところで何かしても気づかれにくいが、今はバイクに目が向いている時期。アクションを起こせば、気づいてもらいやすい。キャンプツーリングの提案でもいいし、試乗会でもいいし、販売店Aのような売り方の工夫でもいい。何かしらのアクションを起こすことが未来につながるだろう。



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