公開日: 2023/04/03
更新日: 2023/04/11
自動車や二輪車を運転するにあたり加入が義務付けられている自賠責の保険料が4月1日から引き下げられることが決定した。二輪車は最大10.5%の値下げとなる。2021年以来2年振りの改定となるが、この背景にあるものとは何か?
金融庁は1月20日、「自動車損害賠償責任保険審議会」を開催し、23年度の自賠責保険料を引き下げることを決定した。2022年に出荷・販売台数ともに今世紀最多台数を記録した小型二輪の自賠責保険料(沖縄県を除く離島以外の地域)は現在、7270(12か月)、9270円(24か月)、1万1230円(36か月)。これが4月1日以降は、7010円(12か月)、8760円(24か月)、1万490円(36か月)に改定となる。その他の区分は表の通りとなり、値下げ率では小型二輪が最大6.6%、軽二輪が最大10.5%、原付が最大4.0%となっている。
この自賠責保険の料金改定の背景には、交通事故発生件数の減少がある。警察庁の「令和4年中の交通事故の発生状況」によると、昨年の自動車・自動二輪車・原付自転車・自転車乗車中および歩行中の交通事故件数は30万1193件。2021年は30万5196件、2020年は30万9178件となっており、最多となる2004年の95万2720件以降、毎年減少し続けている。これには、コロナ禍によって外出する機会が減ったことや、衝突事故を防止する自動ブレーキなどの安全技術が向上していることも関係している。
二輪車の交通事故発生件数についてだが、警察庁の資料( 自動二輪車と原付自転車の数値を合算)によると、2022年の発生件数は3万8945件。2021年は4万0511件、2020年は4万1516件となっており、二輪車も減少傾向にある。なお、昨年の二輪車の年齢層別死傷者数(同)を見ると、20~24歳が最も多く5246件、続いて50~54歳が3903件、そして45~49歳が3891件となっている。これは、若年層の免許取得者が増えていること、そして、昔乗っていた時の感覚との違いで操作ミスをしてしまうリターンライダーが増加していることも関係している。
自賠責保険は、加入が義務付けられている公共性が高い保険であるため、「ノーロス・ノープロフィットの原則」が適用されている。これは、言葉の通り損失も利益も出さないギリギリのラインで運用しなければならない、という考え方。つまり、自賠責保険は事故件数の減少により支払う金額が減っているため、それに伴い、加入者への保険料も安くしなければならないのだ。そのため、自賠責保険は定期的に料金の見直しが行われており、ここ数年では2020年に平均で16.4%、2021年には6.7%の引き下げを実施。損害保険料率算出機構の調べによると、自賠責の保険金支払額は13年度の8074億円をピークに減少傾向となり、21年度は5602億円にまで減っている。
自賠責保険は、改正道交法の施行に伴い7月1日より「特定小型原動機付自転車」(特定小型原付)という新区分に分類される電動キックボードも加入が必須となっている。電動バイクは現在、原付と同じ保険料となっているが、7月以降、特定小型原付専用の区分が設けられる方針だ。
自賠責保険についてよく耳にするのは、「更新を忘れてしまった」「期限が切れているのに気づかなかった」といった声。忘れていたでは法令違反になってしまうため、電動キックボード購入時の加入忘れや、更新忘れを防ぐためにも、ユーザーへの事前告知がポイントとなる。安全運転のためのアドバイスなどと合わせて、交通事故件数の減少に伴い自賠責保険料が引き下げられているという現状について、ユーザーに知ってもらうことも販売店の役割といえるだろう。
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