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ステマ規制で何がどう変わる? 「口コミ」のやらせ投稿は景品表示法違反に

公開日: 2023/11/03

更新日: 2023/11/14

10月1日より、ステルスマーケティングは景品表示法の規制対象となった。いわゆる「ステマ規制」だ。「消費者が広告であると認識できないもの」が該当する。いままでは規制する法律がなかったが、今後は違反すると、罰則が科される場合がある。

インフルエンサー300名にアンケート。全体の45%がステマ依頼を受けたと回答

インフルエンサー300名にアンケート全体の45%がステマ依頼を受けたと回答
インフルエンサー300名にアンケート全体の45%がステマ依頼を受けたと回答

景品表示法について消費者庁は、景品表示法第5条第3号の規定に基づき、ステマを「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」と定めている。口コミのいわゆる「やらせ投稿」は不当表示となり、景品表示法違反となる。「実質的には広告なのに、一般消費者が広告であると認識できないもの」が該当する。

代表的な例を挙げてみよう。自社で扱っている商品をECサイトで販売したとする。その商品に対し、好意的で高評価なレビューを掲載するために、スタッフが消費者を装い「コストパフォーマンスに優れた素晴らしい商品」などと投稿したとする。これは、明らかなNG行為となる。

ここ数年、増えているのは、企業が商品やサービスに関する記事を、その分野において影響力のあるインフルエンサーにSNSなどでPRしてもらう手法。こうした広告活動自体はNG行為ではない。問題なのは、前述の通り広告であることを伏せること。これがステマ規制の対象と見なされるのだ。また、企業によるインフルエンサーの投稿内容への関与の有無もポイントとなる。両者における過去の関係から遡り、具体的な依頼内容や対価の問題など、両者の関係性や具体的なやりとりなどの情報を元に判断される。

景品表示法について消費者庁は、景品表示法第5条第3号の規定に基づき、ステマを「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」と定めている。つまり、逆に言うと「広告」であることを表示すれば、「判別は困難ではなくなる」ということになる。

ステルスマーケティングに対する景品表示法上の対応の限界
ステルスマーケティングに対する景品表示法上の対応の限界

消費者庁は景品表示法とステルスマーケティングに関する実態調査(ヒアリング調査・アンケート調査)を行った。アンケートは現役のインフルエンサー300名に実施したものだが、そのなかに「ステルスマーケティングを広告主から依頼された経験はありますか」という質問がある。これに対し41%が「はい」と回答しており、そのうち45%がその依頼を受けたという。

ヒアリング調査については、「広告主が不正レビューの投稿の指示を行うことはあるのか」の問いに対し得られた回答のなかから一部、抜粋し紹介する(回答者はプラットフォーム運営事業者)。

●「最近の不正レビューはブローカーを通じてSNS上で消費者を集め、それらの消費者に不正レビューを投稿させる場合が多い」

●「消費者に実際に商品を購入させた上で、商品代金を不正レビュー業者が全額負担し、消費者自身にレビューを投稿させるものも多くなってきている。この手口は、実際に商品を購入するのが普段は普通に買い物をしている一般の消費者であり、不正レビューのために作成されたアカウントではないことから、検出することが難しくなってきている」


二輪業界で車両・パーツの輸入販売や二輪関連企業を中心に製品プロモーション全般を請け負う広告代理店のA氏に話を聞いた。

「弊社の主力業務は販促プロモーションです。メーカーからの依頼も多いのですが、その理由は、メーカーではなかなかSNSを使ったプロモーションを自社で展開できないからです。キャスティングや撮影などまるごと受けてしまうこともあります」

クライアントからは、たいがい「インフルエンサーの〇〇さんに頼みたい」「〇〇のウェブニュースに掲載したい」という要望を受ける、とAさん。アドバイスをしつつ、その要望は積極的に取り入れてきたという。

「例えば、インフルエンサーに実際に製品を使ってもらい、「〇〇を使ったけど、すごく良かった」などと書いて貰っていました。以前はこれが普通でしたが、今後はそこに『PR』など広告と分かる表記を入れなければならない。そうすると価値が一気に下がってしまうんです。でも法律は守らなければなりません。正直、葛藤してますが、まだまだ線引きが難しいというか、結構グレーな部分もあるので、そこがどうジャッジされるか、今後の状況を注視しつつ効果的な対応を打ち出したいと考えています」

違反者には消費者庁による措置命令が

違反者には消費者庁による措置命令が
違反者には消費者庁による措置命令が

では、二輪販売店にはどのように関係するのか見ていこう。自動車公取協は、消費者相談窓口に苦情相談として多く寄せられる中古車事業店の「口コミ」についても、高評価ばかりであるなど、販売店によるやらせ投稿の疑いがあるものが見受けられる、と発表している。これらの問題については、二輪関係においても懸念されるところではある、と見解を明らかにした。また、「ステルスマーケティング規制の運用基準等を参考にし、『口コミ』投稿に事業者が関与しない等、不当表示とならないよう注意し、適正な表示を行うようお願いしたい」としている。また、公取協は「口コミ」で不当表示となる恐れのあるケースとして次の2点を挙げている。

【ケース①】掲載店による自前投稿
●消費者になりすまして、掲載店自らが高評価の「口コミ」を投稿、または、ユーザーに代わり投稿( 代理投稿)する等、販売店が投稿内容に関与している。

【ケース②】掲載店が投稿内容等をチェック、掲載可否を判断
●掲載店による販売実績確認の際、投稿内容も併せて確認し、低評価のものは「販売実績 なし」として掲載させない等、販売店が投稿の可否に関与している。今後の対応として公取協は次のような対応を行うことを公式に発表している(カコミ記事「自動車公正取引協議会の公式対応について」参照)。

では、現在、二輪に関する事例はあるのだろうか。自動車公正取引協議会二輪事業部の北澤冬樹さんは、現時点では具体的な情報はない、としつつも、今後は二輪中古車に関連するウェブサイトへの口コミ投稿の実態調査を行い、状況を把握する予定であることを明かしている。では、もし違反が発覚した場合はどうなるのか。

「消費者庁による調査の結果、違反行為が認められた場合には、景品表示法違反として消費者庁による措置命令が行われます。当協議会ではそのような問題が起きないよう、会員に対して『ステマ規制』に関する運用基準の内容の周知を図り、不当表示の未然防止を図っていきます」

今回の規制にはグレーな部分もあるが、これについては、「実態調査結果や二輪中古車情報媒体社へのヒアリング等を通じ、問題発生の原因等について把握し、対応します」としている。今回の法改正を受け、「ステマ規制」に関する運用基準を踏まえ、公正競争規約の改正に向け検討する、とのこと。様々な問題が絡む規制であるため、当面、注視が必要だ。

自動車公正取引協議会の公式対応について

自動車公正取引協議会の公式対応について
自動車公正取引協議会の公式対応について

■会員事業者に対し、「ステマ規制」に関する運用基準の内容の周知を図り、不当表示の未然防止を図る。なお、周知活動は、賛助会員である二輪中古車情報媒体社の協力を得て進める。

■二輪中古車情報媒体社に対し、やらせ投稿等の「口コミ」の不当表示について、未然に防止するための対応策の実施を要請する。

■二輪中古車情報ウェブサイトにおける「口コミ」投稿の実態調査を実施、問題となるおそれのある「口コミ」投稿が認められた事業者及び同「口コミ」が掲載された二輪中古車情報媒体社に対するヒアリング等を実施、問題発生の原因等について把握する。

■「ステマ規制」に関する運用基準を踏まえ、公正競争規約の改正に向け検討を実施する。
⇒「口コミ」等の内容が優良・有利誤認に当たるかどうかを問わず、「事業者による表示であると消費者が判別することが困難な表示」を不当表示として禁止する規定を新設
※現行の規約では、優良・有利誤認となるものだけが不当表示として規制の対象



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