販売店取材注目

【販売店取材】モーターサイクルショップOASIS 乾 智 社長(北海道)

公開日: 2022/11/29

更新日: 2023/05/02

「本州のバイクショップからも情報収集し、 人気モデルをリサーチ。仕入れは情報戦なのです」

北海道標津郡中標津町。北海道の道東エリアにある町で、北には羅臼町、南には根室市が位置している。今回取材を行ったモーターサイクルショップOASIS(以下、オアシス)は、この町に店を構えている。社長は中標津町出身の乾 智(いぬい さとし)氏。同氏は1人で運営を行っている。

乾社長が二輪業界で働き始めたのは2002年。同氏が28歳の時だ。それ以前は、四輪販売店で板金塗装の仕事を8年間行っていた。けれども、高校生の頃から抱いていた、いつかは独立開業を、との思いを実現するため、一念発起し2002年にオアシスを創業した。

商材はバイク。なぜ四輪ではなく二輪販売店となったのか。この理由について乾社長は次のように説明する。

「当時、中標津町には四輪販売店がかなり多く、新たに参入するのは難しいと感じていました。そこで、目を付けたのがバイクでした。元々興味があり、クルマの仕事をしながら時間を見つけ、友人のバイクの整備やカスタムなども行っていましたし、中標津町に二輪販売店は数えるほどしかなかった。そのため、この町で生計を立てていくためにはバイクだと考えたのです」

店舗は「佐藤タイヤ商会」の休憩室だった建物を改築して使用
店舗は「佐藤タイヤ商会」の休憩室だった建物を改築して使用

乾社長は開業当初、バイク10台ほどが入る大きさの建物を店舗としていた。これは、同氏の父親の友人であった佐藤亘さんが経営する四輪用タイヤを扱う「佐藤タイヤ商会」の一角にある建物。そこを間借りして営業していた。この場所を選んだ理由は、開業資金が限られていたこともあるが、佐藤さんに後継者がおらず、年齢の問題から引退が迫っていたことも関係しているという。

「佐藤さんには、若い頃から家族ぐるみでお世話になっていたため、看板を下ろして欲しくありませんでした。私は四輪販売店での経験があるので、タイヤ事業を継ぐことを前提に、オアシスを開業させて欲しいと頭を下げました。これを受諾して頂き、敷地内に店を構えたのです」

以降、オアシスを運営しながら、佐藤さんの下で四輪用タイヤの販売や交換などの業務も実施。そして5年後の2007年、同氏の引退に伴い、タイヤ事業を継いだ。北海道においては、タイヤ交換はオン・オフシーズンの変わり目には不可欠な作業。北海道では11月~4月の半年間オフシーズンを迎えるため、毎年9~10月、4~5月にかけて依頼が集中するという。

ユーザーが欲しがるモデルを分析して仕入れる

希少な国産高年式車をBDSバイクセンサーに掲載し、全国のユーザーに販売
希少な国産高年式車をBDSバイクセンサーに掲載し、全国のユーザーに販売

乾社長がメインに扱っているのは、NinjaZX-14RファイナルエディションやZ900RS 50thアニバーサリーモデル、2022年式CB400SFといった、希少な国産高年式車。これらを扱う理由は、ネットを活用したオアシスの販売手法が関係しているという。

「開業当初より、商圏を中標津町や北海道だけではなく、全国にしなければバイクは売れないと思っていたため、2005年にWEBサイトへの掲載を始めました。その中で遠方のお客さんに売れるバイクは何かと考えた時、他店でも販売しているモデルではなく、タマ数の少ない高年式車を扱うべきだと思い至ったのです」

さらに、乾社長は走行距離が1万㎞未満の車両を多く扱っているという。

「高年式で走行距離の少ない車両であれば、よほどのことがない限りトラブルは起きません。また、私はクレームに繋がるリスクを減らすため、走行距離が3000~5000㎞の車両であってもタイヤ交換を行ったり、場合によってはバッテリーも交換してから販売しています。そうすることで極力、トラブルが発生しないようにしているのです」

今日、ユーザーとのトラブルは店の口コミにも影響を及ぼす。オアシスのユーザーの多くは、バイクを直接見ることなくメールや電話のやり取りのみで購入するため、いかに信頼を得るかが重要となる。そのため、前述のタイヤやバッテリー交換は欠かせないという。

本州のバイクショップからも情報を収集

国産高年式車やスノーバイクなどが50台ほど展示されている
国産高年式車やスノーバイクなどが50台ほど展示されている

希少な国産高年式車を扱う上で重要となるのが、車両の仕入れ。乾社長はオークション、買取、業販の3つを活用しているが、仕入れる前に必ず行っていることがあるという。

「ネットやバイク雑誌を見て、いま北海道にどんなバイクがあるのか、ないのかを調べています。また、他店の販売価格や直近の相場を確認し、どのモデルであれば売れるか、お客さんはどんなモデルを探しているか、ということを考えてから仕入れを行っています」

さらに、乾社長は本州のバイクショップからも情報を得ているという。

「ある人気モデルの関東での仕入れや販売状況を聞いた際、あったら売れるのに入ってこないから売れない、と教えてくれたため早速、業販で複数台仕入れました。その結果、それらはすぐに売れた。お客さんに頼まれてからバイクを探すと時間がかかるため、他店に流れてしまう。そのため、お客さんが欲しいと思うモデルを分析して仕入れることが重要となります。仕入れは情報戦です」

このように、人気がある車両の情報をキチンと調べてから仕入れ、それらをWEBサイトに掲載することで、全国から多くの問い合わせが来るのだ。 また、乾社長は買取車両をユーザーに販売するだけでなく、オークションに出品することで利益を出しているともいう。

「昨年はコロナ禍によるバイクブームの再燃で相場が高騰し、人気モデルは店頭での販売価格とオークションの落札価格があまり変わりませんでした。そのため、買取車両の多くをBDSに出品しました。けれども、今年は想定通り相場が落ち着いたので、お客さんに販売する台数を増やしています。私はモデルごとにオークションへの出品とWEBサイトでの販売、どちらの方が大きな利益を出せるかを考え、買取車両を動かしています」

スノーバイクの販売によりオフシーズンが一変

ユーザーと一緒に楽しむことで、スノーバイクの魅力を伝えている
ユーザーと一緒に楽しむことで、スノーバイクの魅力を伝えている

乾社長が扱う商材には、さらに特長がある。それは、モトクロッサーのフロントにソリ、リアにキャタピラを組み付けた、スノーバイクを販売しているのだ。扱い始めたのは2010年。このキッカケについて、同氏は下記のように説明する。

「北海道のオフシーズンはバイクに乗ることができないため、販売台数や整備件数が減ります。また、自宅で保管しているお客さんのバイクを雪から守る冬期預かり業務も行っていますが、車両を受け取るのは10~11月。そのため、当時のオフシーズンは仕事がない日もありました。このままお客さんが来るのを待つだけではダメだと考え、冬でも扱える商材を探し、その時見つけたのがスノーバイクだったのです」

乾社長は現在、9月頃よりスノーバイクの整備を実施。そして、雪が大量に積もる12月末~3月末の期間、毎週のようにユーザーと雪山に行き、一緒に遊びながらスノーバイクに乗ることの楽しさを伝えている。このような取り組みがスノーバイクの購入に繋がり、昨年は20台以上を販売。いまでは、本州からも遊びに来る人がいるほど参加者が増加しているという。

前述の希少な国産高年式車やスノーバイクだが、その多くは2020年に購入し、改修工事を経て昨年1月に開設したショールームに展示している。この理由について、乾社長は次のように説明する。

「以前まで、ウチには展示スペースがなく、店舗に置ける車両の台数が限られていたため、在庫車は冬期預かり車両と一緒に、車で10分ほど離れた倉庫に保管していました。そのため、突然来たお客さんに倉庫にあるモデルを見せて欲しいと言われても、私1人で店をやっているため留守にすることができず、断っていました。また、取扱台数も増え、在庫車の置き場に困っていたので、これらの課題を解決するため、思い切って店舗の近くにショールームを設けたのです」

この結果、より一層取扱台数は増加し、現在では50台ほどの車両を展示。また、ユーザーが突然来店した際にも、すぐにバイクを見せることが可能となった。さらに、建物内には広々とした整備スペースを設けているため、複数台同時に整備ができるようになり、作業効率も上がっているという。

希少な国産高年式車のWEBサイトでの販売やオークションへの出品をはじめ、スノーバイクの取り扱い、ショールームの開設などが功を奏し、乾社長は昨年、前年を大きく上回る業績を達成した。これらの新たな取り組みを実践することでオアシスを発展させてきた同氏の姿は、常に変化することの重要性を証明している。



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