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【トップインタビュー】株式会社キジマ 木嶋孝一 代表取締役社長 <前編>

公開日: 2023/12/07

更新日: 2023/12/19

創業は1958年。その数年後、日本にモータリゼーションの波が押し寄せることを、あたかも予期していたかのような時代に商いを開始したキジマ。ニーズへの即応と圧倒的な開発スピードにより、業界内に確固たる地位を築き、「ブランド」としての認知を加速させた。2011年の東日本大震災以降、着実な成長を続けている。

四輪、二輪のゴム製パーツのメーカーとして先代の木嶋孝行会長が創業

四輪、二輪のゴム製パーツのメーカーとして先代の木嶋孝行会長が創業
四輪、二輪のゴム製パーツのメーカーとして先代の木嶋孝行会長が創業

――― キジマさんは歴史のあるメーカーですが、社長は3代目でしょうか。

木嶋
 私は2代目なんです。弊社は今年、65周年なのですが、50周年を機に創業者である父から引き継ぎました。実は過去に何度か社名を変えているんです。創業は1958年で不二屋ゴム商会としてスタートしましたが、その後、東洋ゴム商会、木島ゴム商会、そして木島となりました。1992年、カタカナ表記に変更し現在に至ります。

――― 業界内でのネームバリューは、かなり高いと思います。

木嶋
 65年という長きにわたり二輪業界で仕事をしてますからね。ホンダのカブも東京タワーも弊社と「同い年」なんです(笑)。

――― 先代が「不二屋ゴム商会」を創業された経緯は。

木嶋
 父は元々、オイルシールとかOリングなどのゴム製品を扱う会社にいたのですが、独立した後も、継続して同じ商品を扱っていました。でも、強みを出すためにはオリジナル商品が必要との考えから、マッドガードやステップのゴムなど、ゴム製品の金型を作りラインアップを増やしていったのです。

――― 当時は二輪パーツ以外にも扱っていた。

木嶋
 二輪だけではありませんでした。昭和33年なので、モノがない時代。オイルシールやOリング等のリプレイス品を販売していましたが、四輪と二輪双方を扱うよりも、どちらかに絞るべき、との考えに基づき二輪パーツに注力しました。これが1965年頃です。アメリカ視察にも出かけ、色々と学んできました。日本にはないモノを見た時に、魅力的に感じた製品も数多くあったようです。例えば金属パーツ。ゴム製品は、どうしてもメイン商品にはなれない。そこでステップ全体とハイウェイバーも作るようにしました。東京モーターサイクルショーにも第4回の開催から継続して出展しているんです。

――― それは凄いですね。そういう環境下で生活してきたわけだから、いずれは会社を継ぐのだ、という意識はあった。

木嶋
 父の思いは感じていたので、最低限の学問を、と思い工学部機械科を卒業しました。

シルバーピジョンに乗る木嶋孝行氏。創業当時に撮影
シルバーピジョンに乗る木嶋孝行氏。創業当時に撮影

――― キジマに入社したのはその後。

木嶋
 いえ、大学卒業後はヤマハ発動機に入社し、「サービス部門」(メーカー修理)というセクションに配属されました。ここは販売店の修理業務のフォローや重整備を行う部門です。約2年が過ぎようとした時、事情により家業に入らなければならなくなりました。私としては、あと3年は学びたかったのですが、どうしても叶わず・・・。でも、凝縮した2年間でした。どんな問題が発生しても必ず対処するという、メーカーとしての強固な意志を感じつつ、少しでも多くのことを吸収するつもりでやってきたので、モノ作りに対する考え方や販売後の責任問題など、多くのことを学ぶことができました。

――― 強く意識していたことはありますか。

木嶋
 自分が「砦」だという強い思いですね。適当に作業をした結果、もし何か問題が発生すると、それは私個人ではなく会社全体の責任となります。そのため、自分はいま、会社の代表として目の前のオートバイと向き合っているのだ、という意識は常に抱いてました。ごまかしは一切きかないので、「万が一」はありません。100%を目指さなければならないんです。

ポイントはスピード。他社が2か月かかるところを2週間で

1968年、軽三輪・軽四輪用のビニールフロアマット工場を西新井に新設した頃、当時の従業員と撮影
1968年、軽三輪・軽四輪用のビニールフロアマット工場を西新井に新設した頃、当時の従業員と撮影

――― キジマさんでは製品の企画から開発、製造、販売を手掛けていると思うのですが、製品点数はどれくらいあるのでしょうか。

木嶋
 弊社はどちらかというと企画、開発、販売のフローが現状に最も近いと思います。弊社で企画したものを協力工場に依頼し製造してもらいます。組み立ては、基本的には社内。部品を仕入れ、組み立てたうえでパッケージングを行います。これらオリジナル商品のアイテム数は4000点ほどになります。

――― 4000点ですか。ちょっと驚きです。

木嶋
 これでも少なくなったほうなのです。バブル期には有象無象のパーツも多く、その点数は膨大でした。ウェアなどは色、サイズも多く揃えていますし、チェーンやスプロケットなどは、1つのアイテムで複数のサイズを展開しています。採算ベースに乗らない商品は、落としていかなければならないので、私が入社した時には、「負」を潰すことに注力していました。以前はいくつも大ヒット商品があったけど、いまはなかなか生まれにくくなってきました。少し前までは、10商品中1 商品が当たれば、仮に他の9商品が不採算だったとしても、それを穴埋めできるぐらいの売上がありました。そういう時代だったのです。

――― ヒットやホームランの出る率が減ったということですね。

木嶋
 いまは難しい時代です。私の仕事は業績を伸ばすこと。そのためには売り上げも伸ばしていかなければなりません。採算、不採算を念頭に、見直しを図っていく必要があります。

1975年には、第4回モーターサイクルショー(後楽園)に初出展
1975年には、第4回モーターサイクルショー(後楽園)に初出展

――― 最も重要なのは、どの商品をどの程度、どのタイミングで出すか、というマーケティング、マーチャンダイジングだと思います。

木嶋
 会長の時代と現在とでは、需要面に大きな違いがあります。当時はモノがない時代だったので、「こういうモノが欲しい」というニーズに溢れていたのです。時代の違いから、マーケティングのやり方もいまとは全く違いました。かつては『雑誌と流行を作る』みたいな動きもあったほどです。また、商品の完成を見越して、早朝から業者が閉まったシャッターの前で待っている、ということもありました。

――― それはビジネスバイクやミニバイク、TW、ビッグスクーターの時代ですね。

木嶋
 はい。実は、あまり堅苦しくは考えてないんです。もちろん、紙媒体も重要なのですが、情報はSNSのほうが早い。基本的には新車がリリースされたら、『こういうの作ったらどうかな』というアイデアを持ち寄り、商品化の有無についてディスカッションしたうえで、最後は私が決裁し進めます。幸い作るモノがなくて困ったことは、一度もないんです。

――― 常日頃から考える癖がついているわけですね。担当セクションはどこでしょう。

木嶋
 企画部と開発部です。いまはアイデアベースで年間200~300本ほど。そのうち発売されるのは150アイテムぐらいですね。

――― 商品化は時間との戦いだと思います。企画、開発、そして設計が終わり、発注するまでの時間はどれくらい掛かるのでしょうか。

木嶋
 これはもうピンキリです。簡単なものであれば、その日のうちに発注できますし、1週間かかるものもあれば、金型を起こす必要がある場合は2~3か月かかることもあります。基本的な考えとしては、他社が2か月かかるところをウチは2週間で仕上げる。そんなスタンスでいます。

後編はコチラから!!




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株式会社 キジマ |バイク部品メーカー

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モーターレク総合開発メーカー 株式会社キジマ

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