公開日: 2025/09/18
更新日: 2025/09/20
21歳という若さでRED ZONEを創業した清野社長。地域に根差した地道な努力の積み重ねにより認知度は向上。その結果、確固たる地位を築き上げた。そんななか新たな柱として急成長したのがバイクレンタル。右肩上がりの成長は拡大の一途となった。ここに活路を見い出した清野社長はこの3月、新店をオープンした。予想通りレンタル需要は好調な推移。だが、そこには大願成就すべきある思いがあった。
吉祥寺店は、見た目は地域に密着した街のバイクショップ。実際、普通に販売を行うし修理もする。そんななか、狙い通りレンタルが徐々に伸び始めたわけだが、清野社長はレンタルについて、主軸の一つである、との明言を避ける。その背景には、ある理由があった。それは新車販売権について。冒頭でも触れたが、同氏がいま、最も強く望んでいるのはメーカー契約。取材中、何度となくその言葉を繰り返していた。強固な思いがありつつも、レンタル需要がどんどん大きくなってきたことから、心のなかにある種の逡巡、葛藤が生まれたのだろう。
中古の拡充という選択肢もあるが、これについてはスペースの問題を指摘する。中古を主軸とするためには数(台数)が必要。現拠点では清野社長が思い描く数の確保が困難、というのがその理由だ。
「新車も販売していますが、基本は顧客からの要望に基づき業販で仕入れ販売しています。これはこれでユーザーニーズに対応しているわけですが、メーカーの看板があれば、この店ならこのバイクが買える、とお客さんの側から来てくれるわけです。21歳で店を始めた時、新車販売を一つの目標に掲げました。3月に2店舗目はオープンしたけど、新車ディーラーになる夢は、まだ実現できてない。だから、私にとって現在の状態は未完成なのです」
レンタルを始めたのは、ある意味、大願成就のための手段でもあったのだ。店のカラーやイメージを醸成・演出する方法として清野社長が実践していることがある。一つはユニフォーム。清潔感のある白いシャツに赤い“RED ZONE”の刺繍が入ったもの。メカニック用にはロゴ入りのツナギを用意。これらは見た目の統一感に分類される。もう一つは挨拶などの接客教育。一つ例を挙げると、同店では「いらっしゃいませ」という言葉は使わない。その代わりに一般的な挨拶を用いる。これはアパレルショップでたまに見られるやり方。それ以外の言葉としては、「ご来店ありがとうございます」と挨拶する。
「いらっしゃいませ」を使わない理由として清野社長は「商店っぽさが出てしまうから」と説明する。
ラインアップについても、一つの基準がある。主に一定クォリティ以上のスポーツ系モデルを中心に扱う。これは店舗スペースにも関係する。高品質車両は基本的には単価も利益率も高い。限られたスペースには適しているというのが、その理由だ。ラインアップが変わるとユーザー層も変わる。高品質な車両を販売し、高品質な接客を心掛け、優良顧客と良好なコミュニケーションを図る。これが清野社長の基本的な考え方なのだろう。
高円寺店にはあって吉祥寺店にないのは店の認知度。本店はオープンから20年以上経過していることもあり、地域ユーザーからの認知度は抜群。平日でも複数の来客があるのは当たり前。車両販売や修理依頼のバランスも取れており、レンタル客との棲み分けもできている。
一方の吉祥寺店は、まだオープンから5か月しか経過していないことや立地の違いもあり、高円寺店の水準には至っていない。レンタル客を指す“コト消費客”は順当に伸びているが、“モノ消費客”はまだ少ない。ここを厚くするため、実験的に「修理難民」と言われるユーザーの受け入れを検討している。これは経営方針における分水嶺となる可能性がある。だが、清野社長はそれを理解しつつも、あえて断行しようと考える。オープンからまだ5か月。仮に店の明確なカラーが固まっていないとすれば、それも一つのやり方なのかもしれない。
どのような路線で取り組むにしても、それに対応するのは人材である。現在、正社員は両店合わせ6名いるが、「スタッフにもお客さんにも喜ばれる店づくり」を念頭に、スタッフとのコミュニケーション促進を目的としたミーティングを定期的に行っている。
会議は全体ミーティングと個別面談の2パターン。全体ミーティングは文字通り全スタッフでのミーティング。3か月に1度の頻度で開催しており、開催日には2時間早く店を閉める。直近開催のテーマは「レンタルバイク」。どうすれば、さらに利用者を拡大しユーザー満足度を高めることができるか。事前にスタッフ全員にテーマを与え、会議の日にそれをレポートにまとめ発表するよう伝えている。
出た意見の中から、採用可能なものについては、即実行に移す体制を整える。会議の後は懇親会。吉祥寺の街に出て一杯飲んで解散、という流れ。最近の若い人はあまりお酒を飲まなくなっており、同店においてもスタッフの半分は飲まないという。昭和の時代で言う「飲みニケーション」は成立しにくいが、それでも、そういう場を設けることが大切、と言う。
個別面談はその名の通りマンツーマンで行う。これについては、毎月1名ずつとなる。1人あたり年に2回ほど行う計算だ。ここでは、いわゆるサシでの話なので、全体ミーティングとはまた違った話が出るという。全社に関係する日常的な業務指示や業務連絡は、すべてグループLINE を通じて行う。こうした施策は、スタッフとの意思の疎通という意味において、清野社長はとても大切にしている。
これと共通する考えはAJ東京に関する業務のなかでも発揮されている。同氏はいま、AJ東京の副理事長(副代表)の役職に就いている。そのなかで以前から取り組んでいるのは、主に商品中古車の減免と駐車場拡張活動の2つ。前者については自治体により判断が異なるため現在、時間を見つけては23区をまわり陳情活動を行っている。
駐車場拡張の件も含め、こうした活動には業界環境をさらに良くしたいという使命感もあるが、その他、自身に課している進歩的な考えがある。それはパレートの法則の発展系である262の法則。組織は「優秀な2割」「平均的な6割」「貢献度の低い2割」により構成される、というものだが、清野社長は「優秀な2割で在りたい」と言い切る。その理由について、いまの時代、中心にいないと見えてこないことが多すぎるから、と自論を展開する。ここで言う「見えてこないこと」とは情報を指す。情報をいち早くキャッチできれば、必要に応じて対策が打てる。そのためにも、常に組織の中心にいることが自分にとっても、店にとっても重要なこと、と語気を強める。
「組織の中心にいて、自分で渦を巻き起こしたい、そんな気持ちもある。やっぱり情報、これは私にとっては、何者にも代えがたい命なのです」
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