公開日: 2025/11/18
更新日: 2025/11/18
長年オートバイの開発に関わってきた。退職後も「研究開発」への情熱が消えることはない。ガレージを豊かな時間と感動を育む特別な空間と捉え、「匠の手仕上げバイクスタンド360」を発表する。
センダ技研代表の千田明生さんは現在61歳。2023年12月に35年務めた二輪メーカーを退職し、翌年8月にセンダ技研合同会社を立ち上げる。メーカー勤務時代は、市販車・レーサーなどの研究開発にエンジニアとして携わってきた。
「お客様に愛される商品に、メーカーの一員として関われたことは、とても幸せだったと思います」
組織という枠組みの中で、それなりの苦労や葛藤はあったが、充実した35年間であったと振り返る。
「退職してからハローワークにも通ったんですけど、R&D(研究開発)に関われるような仕事は一切なかった。ならば、『35年関わった二輪に関わることをしよう』と自分で会社を起こすことを考え始めました」
そんな時プライベートで20年以上お世話になっている「ファクトリーイワサワ」にあったオリジナルの360度スタンドが目に留まった。ファクトリーイワサワのオーナーメカニックである岩澤さんは東京下町・深川の、知る人ぞ知る「匠」であるという。
「平日は通常の工場業務をやっているので、バイク整備は週末だけ。だからお客さんのバイクを移動しないといけない。その為のスタンドだったんです。これが都心部の狭いガレージにあったら凄く便利だと考え『自分に売らせてほしい』とお願いしました」
神戸出身の千田さんは、地元の製造メーカーであるカワサキの空冷4気筒のZ1/Z2が好きだった。20年程前に自宅ガレージに眠っていたZでレーサーを製作。ライダーにトニー・シュルツ選手を起用し、当時のレースで見事ポールTOウィンを達成する。その際にマフラー製作や車体回り、アルミタンクを製作したのがファクトリーイワサワだった。長年お世話になっている岩澤さんに「恩返しをしたい」という気持ちもあったという。
こうして完成し好評を得た「匠の手仕上げバイクスタンド360」はクラウドファンディング「Makuake」でテストマーケティング販売をした結果、達成度1515%で手応えを得た。さらにこのバイクスタンドガレージは、シニアビジネスグランプリにもエントリーチャレンジ中だ!
人生100年時代と言われるようになって久しい。バイクに乗るという行為も仕事に対する姿勢も、昔のように単純に年齢で線を引くことが難しくなってきた。その先は自分次第なのである。千田さんの決断は、バイクブームに生まれ二輪関係の仕事に従事する者にとっての、指針となるかもしれない。
「『定年は人生100年時代のスタートライン』。この年齢だからこそ、これまでの人生経験を生かして、世の中の為に何かがやれるはず」
センダ技研は大きな目標を胸に抱きながら、直近は付き合いのあるガレージ関連企業などとコラボレーションしながら、ガレージとそれに関わる用品を開発・販売していく予定である。
また本来の持ち味であるバイクの技術開発にまつわるチャレンジも考えており、コラボ企業などを探しているとのこと。「わくわくしてドキドキ」の提供をモットーにするセンダ技研の今後にも注目だ。
「ガレージは僕のバイクライフに、さらに仕事の構想を練る場所としてなくてはならない。自分のアイディアをカタチにできる、特別な場所です」
「『物神一如』モノと心が一体となり、魂が宿る。日本の職人技とものづくり精神を世界に届けるため」とセンダ技研の会社概要には記されている。 齢61、人生をまだ半分と捉え新たなスタートを切った、千田明生さんの志だ。
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