販売店取材注目

【販売店取材】ウエストウィン株式会社 相野大介 二輪代表(福岡県福岡市)

公開日: 2025/12/22

更新日: 2025/12/22

二輪部門の設立を機に入社した相野氏。社内では積極的にレース活動を推進すると同時に、二輪部門全体の責任者となった。以降、30年が経過するが、薄利多売という過去の戦略から転換し新しい方向性を打ち出したことで、四輪の粗利にも肉薄する水準に成長した。だが、生き残りには新たな柱が必要。そこで“二本目の柱”として位置付けたのが三次元アライメント測定。この測定結果を鑑定証明とすることが、大きなアドバンテージとなりつつあるのだ。

3次元アライメント測定で新境地を開拓。鑑定書がユーザーの選択基準に

見た目はSUV専売店。四輪の取り扱いが相乗効果をもたらす。二輪はすべて店内に展示
見た目はSUV専売店。四輪の取り扱いが相乗効果をもたらす。二輪はすべて店内に展示

福岡空港から福岡市東区方面へクルマで20分ほど走ると、四輪の中古車販売店のような佇まいのショップが見えてくる。展示場にはジムニーを中心とした四駆が数多く並んでおり、専門店であることが窺い知れる。

では、バイクはどこにあるのか。二輪に関しては、展示はすべて店内。その数は十数台にとどまる。これは一体、どういうことなのか。実はここ、ウエストウィン株式会社(島雄司社長)は、いまから50年前に創業。ジムニーを中心とした4WDを専門に扱う四輪販売店として販売活動を行ってきた。その数年後、社内に二輪部門を設置。その後、入社したのが相野氏であった。

同氏は学生時代からレースに興じていた。ウエストウィンでは当時からすでにレース活動を行っていた関係から、いつしか足しげく通うようになった。ユーザーの立場で店の手伝いを行ったりしていたが、いつしかそれが生業となった。入社以降もレース活動を積極的に推進。最終的には西日本ロードレース選手権GP250クラスで優勝するなど、その実力は本物。こうした相野氏のパーソナリティもあり、ウエストウィンにはレースのイメージが強く定着するようになった。以降、30年以上にわたり二輪部門を取り仕切り、成長・発展させてきたのだ。

現在における二輪部門の主体は中古車販売。GPZ900RやハーレーのRH1250S、ボルトなど大型バイクが中心に並んでいるのが確認できる。その他、メンテナンスやカスタム、車検まで全てを賄う。特筆すべきは、オンリーワンと言っても過言ではない、あるサービス。それは「三次元アライメント測定」だ。大きな可能性を秘めたサービスなのだが、これについては後述する。

既存ユーザーのなかには、相野氏の影響を受け、レースに興じている人も多い。しかし、いまの時世を反映してか、そうしたマニアックなユーザーだけではなく、ちょっとカスタムしてツーリングを楽しむ、といった普通のユーザーも少なくない。年齢層はレース活動を行っている関係からか、40代~50代が中心。これは、二輪販売店の顧客年齢の平均よりも若いといえる。

ウエイトが高いのは通販で、その多くは福岡県外。最近では岩手のユーザーにハヤブサを納車したという。

「バイクセンサーで探すお客さんが増えているので、いまは完全にボーダーレス。自分の要望に叶ったバイクがあったので買おうとしたところ、たまたま遠方の店だった、ということなのだと思います。でも、中心となる商圏は、やはり九州全域でお客さん全体の約半数を占めます。後の5割が本州など他の地域。最近では普通二輪免許を取ったばかりのお客さんがXJR400を購入したり、大型を取ったお客さんがCBR600RRを注文買いしたりと様々です」

ユーザーの購入予算については、ギリギリではなくやや高めに設定して貰うのがウエストウィンのやり方。これは、仮に仕入れた車両の“商品化”に想定以上の手が掛かった時、ユーザーにプラス金額を請求するよりは、予算内で収まったという体のほうが心証もよく、納得性も高まる。つまり、できるだけ安く探そうとは考えないこと。これが基本原則なのだ。仕入れはBDS。九州、関西、柏と全会場から探す。その他、他の二輪販売店の業販に頼ることもあるという。

他店よりも割高な価格設定でも、納得性の高さから需要は上向き

サーキットを貸し切り行われるレッスンはかなり本格的。ウィークポイントを“発見”し、そこを徹底的に指導してもらうので、上達も早い
サーキットを貸し切り行われるレッスンはかなり本格的。ウィークポイントを“発見”し、そこを徹底的に指導してもらうので、上達も早い

ウエストウィンでは、バイク部門を立ち上げてから40年以上が経過するが、同店のユーザーの特徴として、一度接点を持ったら10年、20年と長きにわたり定着するユーザーが多いことが挙げられる。また、四輪販売との相乗効果もある。

「例えば近所の高校生が遊びに来るようになり、そのうちバイクを買ってくれる。その流れができると、次はクルマも買ってくれるのです。こんな方もいます。クルマを買いに来店した時、実はバイクも持っているけど買い取ってくれるの? と切り出し、それを頭金にクルマを買うケースも増えています。これは四輪と二輪の併売店であることの大きなメリットです」

ウエストウィンは、四輪からスタートした販売店であることは先に述べた。二輪部門は創業から数年後の立ち上げではあるが、ここ数年、二輪が徐々に売上を伸ばしており、粗利では四輪に肉薄しているという。

「1台あたりの利益率は、3台販売しても1台売っても同じ利益率を確保するようにしています。だから、安売りはしません。以前は販売車両を掲載する時は、どの店よりも安く価格を設定していました。でも、それを止めた。中古相場は考えず車両ごとのセールスポイントを打ち出し、お客さんに「なぜこの価格なのか」を考えていただくようにしています。人気マフラーに換装されている、カスタマイズに差がある、などのポイントがあれば、選ばれる率は高まります。お客さんの層もだいぶ変わりました。やはり価格の納得性なのだと思います」

相野氏は、最近の若者の志向について、自分の若い頃の対極にある、と指摘する。排気量至上主義はもはや存在しない。4スト単気筒を選ぶユーザー心理については、いまでは普通のこと、と言う。以前のように、ツーリングに行きまくる若いユーザーはごく稀。大学生ユーザーなども基本は自宅と大学、自宅とバイト先の往復。原付で事足りるのでは、と思えてしまうが、ただ首都圏と違って地域性を考慮すると、250㏄以上の排気量があるほうが便利、という見方も一方にはある様子。

では、ユーザーを楽しませるための施策についてはどうか。かつてはツーリングにも力を入れており定期開催していたが、不慮の事故があり、それ以来、開催を断念したという。それをキッカケに相野氏のなかでは安全運転に関する意識がさらに高まった。そこで、楽しみながら安全意識・安全運転技術を身に付けられることはできないか、という視点で考えたのが、ライディングレッスン。相野氏はAJ九州の理事でもあるが、「AJ九州後援」という冠のもと、ホンダドリーム大牟田の三井千賀子社長とともに立ち上げた。熊本のサーキット「HSR九州」の教習施設を1日貸し切り実施している。開催は春と秋の年2回だ。

1開催当たりの参加人数は20数名。サーキット側がバイクを貸してくれるので、気軽に参加できるという。

講習時間は朝から夕方まで。1時間程度の座学があり、後はすべて実技講習。参加者の属性は初心者や50~60代のリターンライダーが大半を占める。レッスンの内容は、走る、曲がる、止まるの基本動作が中心。その他、Uターンやパイロン走行など、コースを作り、そこをひたすら走る。あとはHSRのインストラクターによるレッスン。走行の様子を後ろからチェックしてもらい、気付いた点があれば、その都度、アドバイスを受ける、という流れ。これにより個人ごとの不得手なところが見えてくるので、後半はそこに特化したレッスンに切り替える。

参加費は昼食付で1万5000円。決して安い金額ではないが、指導内容の良さが評判を呼び、初回開催からまだ4年ほどしか経っていないが、毎回定員いっぱいとなるほどの人気ぶりだという。

こうした活動は、直接的に店の販売に影響するものではないが、レッスンでの効果を実感するごとに、指導者への信頼は高まる。その感情が店への来店へといざなう可能性は考えられるだろう。その意味では、こうした活動は一つの“種まき”でもあるのだ。

退と淘汰の時代でも、コアな層は存在する。測定サービスはその獲得のための布石

さて、先ほど冒頭で三次元アライメント測定について触れたが、これについて見てみよう。名称からおおよその推測はできるものと思われるが、ひと言で説明すると、最新の三次元測定機をベースに、独自開発のプログラムにより開発した計測システム。車両を分解することなく千分台の精度で車体のフレームや足まわりの不具合を数値化し、それを確認できるのだ。

車体やフレーム、フォーク、スイングアームをはじめ、前後タイヤの整列の確認、チェーンライン(リヤタイヤの左右の向き・前後のスプロケットの整列)など、チェック項目は多岐にわたる。導入の経緯について相野氏はこう語る。

「数十年前、私がレースをやっていた頃、すでに同様のサービスを行っているところがありました。システムはオーストラリアの企業が開発したモノ。フランチャイジーが日本国内に数店あったけど、本国の企業が撤退してしまったのです。そうなると、システムのアップデートができず、もし何か不具合が発生したら、そこでサービスが終了してしまうことになります。そこで考えたのが、独自のソフト開発です。国内にキーエンスという有名な工業製品の測定器メーカーがあります。航空機のパーツを1000分の1単位で計測できるような測定器を開発している企業なのですが、そこに打診しました。バイクのこの円筒部分を計測し・・・・などと、やりたいことを複数、伝えたところ、技術的にはおそらく可能、との返答がありました。でも、プログラムがない。そこで、既存ソフトについて、バイクを測定するため私とメーカー担当者とで協議を重ね、設定を作り変えていきました。ウチの場合は、例えばフロントアクスルシャフト、ピボットシャフト、リアアクスルシャフトを順次、指示に従い測定すれば最終的にでき上がる、といった流れで組みました。簡単に言えば、既存ソフトで可能な、測定設定の変更です」

完成までには1年ほど時間を要したというが、最終的にキーエンスの製品を用いてウエストウィン専用の測定設定を完成させた。キーエンスは圧倒的な収益性と独自のビジネスモデルが注目されており、社員の平均年収は2000万円を超える、国内屈指の注目企業。同社の協力を得て計測機の設定変更を完成させたところに驚きを覚える。

サービスはこの春から稼働しているが、バグを取り除くデバッグ作業や細かなバージョンアップを続けながら“熟成”させている段階。だが、フレーム曲がりの有無やその角度など、現状でも知りたいデータはほぼ測定できる水準にまで完成度は高まっている。

「例えばキャスター角。オートバイの基本的な旋回性能にはアライメントとキャスター角、トレールなどが影響しますが、こうしたデータもすべて把握できます。フロントタイヤが一直線のライン上にあるかどうか、ズレがないか、ホイールに傾きはないか。フロントタイヤで言えば、ステアリングヘッドパイプの歪みがあったら、当然タイヤの接地面は、その角度分、ズレますが、そういったことも分かります。あとはチェーンラインが正しいかどうかの確認もできる。最も重要なのは、フレームの曲がりですね。もちろんスイングアーム単体での曲がりも分かります。バイクを構成する要素は、すべて測定できないと意味がないのです」

測定は、元の状態のデータがないと差異の確認ができない。すべての車両のデータがインプットされているわけではないので、一台いち台データを蓄積していくしかないのだという。ただ、カスタムした車両などは、その状態となった時がデフォルトとなる。その時点で測定を行い、それを基準値とする。そのため、同店では販売車両についてはすべて測定し、「測定済車両」として販売する。このサービスがウエストウィンで購入するユーザーに多大なる安心感を与えているのだ。では、ユーザーからの反応はどうか。

「先日、岩手の方に購入いただいたのですが、バイクセンサーには測定済である旨を載せていますので、それを見て決めたそうです。先ほどお話ししたハヤブサのお客さんも、ウチと他店の二択だったようなのですが、最終的にウチのバイクに付随しているフレームと車体のアライメント保証が決め手となったようです」

測定サービス自体は初めてまだ数ヶ月ほどなので、本格的な稼働には至っておらず、自店での販売車両における測定や、既存ユーザーに対するサービスにとどまっている。計測自体は1台あたり約30分で、計測したデータを解析するのに30分かかる。その後、診断書や認定書を作成して終了となる。人間に置き換えていえば、人間ドックのようなもの、と相野氏。診断費用は3万円。思っていたよりも安く感じたが、これは間にソフトウェア会社を入れずに開発できたことが大きい。これがなければ、3万円でのサービス提供は不可能だったと言う。

元々、レースの世界でのサービスだったものを、日常レベルにまでエリアを広げたわけだが、中には「その測定をして、それでどうなるの?」という疑問を投げかける人も少なくないという。つまり測定後の対応だが、これについては修正もしくは交換の二択となる。

「お客さんの状況に応じた対応をしています。状況とは、走りのステージや経済力です。レースでトップレベルを走るなら交換。趣味として楽しんでいて事故に遭ってしまった、という人は修正とかね。また、擦り易さのための車高変更やセットアップデータも分かります。あくまでも車両の状態とお客さんの要望を考慮し決めます」

相野氏に今後の二輪業界の推移予測について意見を伺うと、10年後、20年後の人口減少に伴う需要の衰退、二輪販売店の淘汰に言及するが、コアな層は減らない、その層を確保できる対策を講じ企業価値を高めておくことが必要。生き残れるのは「プロ中のプロだけ」と力説する。

そのための手段として必要なのが三次元計測サービス。まずはこれをウエストウィンにおける第二の柱として位置づけ、今後、どのようなサービス展開を行えばいいかを様々な角度から研究していくと、ビジョンを語る。

「私はレースを通じて育ててもらった。だから、このサービスを通じて業界に恩返しがしたいんです・・・・。」

取材の最後につぶやいた言葉が印象的だった。

《問い合わせ》〒813-0023 福岡市東区蒲田2-24-27 TEL(092)691-9933 担当:相野



販売店取材記事一覧注目記事一覧

【福岡県】West Winの店舗情報詳細 | 選べる、見つかる BDSバイクセンサー

【福岡県】West Winの店舗情報はこちらから。気になっていたお近くのバイクショップの最新ニュースや整備事例をチェック!九州の新車・中古バイク情報はBDSバイクセンサー

簡単シンプルで探しやすい!バイク・パーツ検索はBDSバイクセンサー

バイクショップの求人
BDSバイクセンサー

人気記事ランキング

「Ori & Kaito」人との出逢いが織りなす、旅の魅力を発信

バイクで世界中を冒険するYouTubeチャンネル「Ori & Kaito」。今回、BDSグループの事業を一般ユーザーに...


2024年キャッシュレス決済比率は42.8%。導入の課題は決済手数料分のコストをいかに確保するか

かつて“現金大国”と呼ばれた日本だが、いまや財布を持たなくても不自由なく生活できる時代となりつつあ...


二輪免許取得者数33万6943人でコロナ前の水準に戻る。年齢別ボリュームゾーンは20~24歳

二輪免許の取得。これは免許区分に関わらず、バイクに乗る、という意志の表れである。つまり、この数字...


制限速度が半分に!? 2026年からの新しいルール

時代に合わせて少しずつ変化している道路交通法。来年以降の二輪に関わる改正道路交通法施行令にはどの...


カワサキ新型「Z900RS SE/CAFE/Black Ball Edition」足つきインプレ! 発売前に跨りました!

Z900RSシリーズ2026年モデル(SE/CAFE/Black Ball Editio)のメディア向け撮影会が開催され、Black Ball...


セブンイレブンが全国の店舗で値引き販売実施! 目印は緑色の「エコだ値」シール

日本全国に2万1551店(2024年4月末時点)もの、コンビニエンスストア「セブンイレブン」を展開するセブ...


バイク希望ナンバー制、令和8年度導入へ

クルマには既に導入されているが、バイクへの導入は見送られていたナンバープレートの『希望番号制度(...


オフ車選びに悩んでいる方必見! 人気オフロードバイク足つき比較

HONDA「CRF250L」、YAMAHA「WR250」「セロ-250」、KAWASAKI「KLX230」! 250ccクラスのオフロード車4台...


2024年二輪国内保有台数。全体はマイナスだが、原付二種以上の合計では過去最多を記録!

2024年の二輪国内保有台数が約1028万台となっていることが、経済産業省『二輪車産業の概況』によって分...


【独断セレクト】ライダーにオススメのパーツ4選! 2025年12月号

BDSレポート編集部が独断でセレクトした「コレってちょっといいんじゃないの!?」というアイテムをご紹...


DYM
SEO Ranking