公開日: 2026/08/24
更新日: 2026/08/25
SSTR(サンライズ/サンセット・ツーリングラリー)は列島横断ラリーとして14年目を迎え、13000人を超える参加者を集めた。風間深志事務所はその他にも年間を通して様々なツーリングイベントを企画・運営している。
「今年に入って一番衝撃を受けたのが全日本モトクロスの現状です。参加ライダーとお客さんの人数が、僕の参加していた時よりも大幅に減ってしまった。このままでは全日本モトクロスが存続できないのではないかという危機感すら覚えました。この状況はロードレースもトライアルも同じ。今週末もあるエクストリーム系のイベントに行って来ましたが、予想より遥かにお客さんが少なかった」
集客を含めたレース人口・イベント集客数の減少は、二輪社会全体で取り組むべき喫緊の課題である。
「全日本レースは開発の最前線でもある。僕らの乗るバイクを作る上で大切な現場を継続させるということは非常に大切な事だと思います。何より自分たちの乗るバイクをコントロールする技術の最高峰を見ることは、ツーリングライダー達にもプラスになるし面白いことです。さらに言えば、クローズドコースのレースなどを自身で経験をすると、公道で危険な走行をしないようになるはずです。レースで得られる高揚感やスリル以上のものは公道では得られませんから。得られているとしたらそれはもう既に危険運転の域ですし、恐らくクローズドコースなどでの得られる「域」を経験したことがないと思います。そうした意味でも、クローズドコースの走行やレース経験は、ライダーの技術向上や安全啓蒙を踏まえても大切で、その技術などにもっと目を向けると、全日本などのレースにもっと興味を示してくれるだろうなと思っているんです。色んな意味で全日本レースの存在は大切だと思っています」
風間さんの世代は50、60代のユーザーの中心と、若年層の間にいる40代のミドル層であり、あらゆる世代の橋渡しとして二輪の普及に努めるべきと自覚している。
そんな現状の中、風間事務所が主宰するSSTRは年々参加者を増やし、今年に至っては約1万4000台の日本一のバイクイベントとなった。第1回目の参加車は127台、試行錯誤を繰り返しながら、コロナ禍や震災(SSTRのゴールは石川県の千里浜)を乗り越えて存続している。この成功の要因とは何であろうか。
「いくつか自分で考えるところはあるのですが、まずゼッケンの存在です。参加者にはゼッケンを配布するのですが、これがダカール・ラリーなどのレースに参加しているプロライダーのような疑似体験、高揚感に繋がっていると思います」
SSTRにエントリーするとゼッケンとルールブック、リストバンドと毎年変わる参加賞(2026年は車体カバー。年度によって異なる)が送付される。参加者は事前にチェックポイントを調べ、自らが選んだルートを自分のペースで走りゴールの千里浜を目指す。パーキングなどでは、ゼッケンやリストバンドを付けていることでライダー同士の会話が自然と生まれる。バイクのジャンルに関わりなくお互いの健闘をたたえ合うのだ。そこには排気量やブランドによるヒエラルキーなど存在しない。
「参加者は出走が決まると、自分のバイクのメンテナンスや装備のチェックを怠りません。SSTRはツーリングライダーの走行距離を飛躍的に伸ばしたと思います。日の出から千里浜の日没まで、全ては自分に委ねられるイベントです。ゴールでは他の参加者と地元の方々が『お疲れ様、お帰り~』と出迎えてくれる。その感動と達成感が翌年の参加に繋がっているんだと思います。皆さんそれぞれが新たな目標を作るんです」
地元の理解なしにSSTRの成功はあり得ない。何よりも地元の皆さんとのコミュニケーションが大切であると風間さんは語る。それでも参加者が1万台を超えた頃から、主催者側の目の届かない、スタート地点などにおけるマナー違反を指摘された事例もある。
「業界では一部のライダーの行動で、これまで色んな場所でトラブルが起きて『バイク立ち入り禁止』となってしまった場所は沢山あります。ライダーの行動が結局は自分達の首を絞めている結果になってはいけない。SSTRでそういう事が起きるとすれば、我々の意図が参加者全員に浸透していないからだと考えます」
SSTRの存在は市場にも少なからず影響を与えている。日本国内ではオーバースペックとも言えるアドベンチャーモデル群が、千里浜に大挙してやってくる。SSTRは彼らが躍動できる舞台となっているのである。更に中間排気量の人気モデルに乗った「若い世代」が数多く参加している事実を、業界としても注目すべきである。来年は記念すべき15周年、参加台数の増加にあぐらをかくことなく、風間さん達の試行錯誤は続く。照明の位置はどうか、導線は最適に確保されているか、砂浜の整地は完璧であるのか。
「80、90年代のようなビッグウェーブはこれまでは起きていない。人口自体が減っていることを考えると、バイク人口が減っていくのは仕方がないこと。でも10年後、20年後を踏まえて僕たちがやらなければいけないことは沢山あるはずです。乗る人もそうでない人にもオートバイの素晴らしさ、楽しさを伝える活動を俳優としても風間事務所としてもやっていきたいと考えています」
SSTRの成功は一日にして成し得た訳ではない。商業的な成功はあくまで14年間継続した結果である。現状を良しとせず、主催者サイドが数々の逆境にも心折れることなく大会の存続に尽力してきた。「サンライズからサンセットへ」来年も全国の1万人を超えるライダーが千里浜を目指すことだろう。そして近い将来、SSTRは「日本の二輪文化の象徴」となるに違いない。
風間 晋之介(かざま しんのすけ)
2010年までモトクロスのレーサーとして活動、背骨の骨折などによりプロレーサーの道を断念。その後俳優としてデビューする。しかし2015年にはバハ1000、2017年・2018年にはダカール・ラリーの二輪部門に出場していずれも完走を果たす。父・風間深志と共に様々ツーリングイベントを主催、俳優としても様々な方面で活動している。
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