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『特定小型原付』の販売スタート、車道を走れる新しい乗り物!

公開日: 2023/07/31

更新日: 2023/08/10

7月1日より、『特定小型原付』の公道走行が可能になった(ナンバーの交付は7月3日以降のため、走行可能となるのは同日以降)。16歳以上であれば免許がなくても運転できることから、車両や走行に関するルールのほか、販売に関するガイドラインも策定されている。特定小型原付の販売を考えている販売店は、そのあたりもしっかりと押さえておきたい。

7月1日時点で、性能等確認制度で保安基準適合性が確認されたのは4メーカー・9車種

性能等確認済シール添付車両
性能等確認済シール添付車両

10cm×10cmと、原付一種の半分ほどしかない幅のナンバープレートのついた電動キックボード。見慣れないナンバーだけに一瞬、エッ、と思うが、これが道交法の改正によって7月1日に規定が施行された『特定小型原動機付自転車(特定小型原付)』だ。

車体の大きさは長さ190cm以下、幅が60cm以下で、最高速度は20km/h。16歳以上なら免許がなくても乗ることができ、ヘルメットの着用は努力義務(最高速度6km/hの『特例特定小型原付』は一部の歩道が走行可能)。

7月1日は土曜日だったため、実際にナンバープレートが交付されたのは3日からとなったが、すでに特定小型原付モデルで公道を走行したという人もいるだろう。

この特定小型原付に関わる道路交通法の改正案が可決されたのは、昨年のこと。以降、ネットでは「最高速度が20km/hだと、他の車両との速度差が大きくて危なくないか?」「不安定な感じで怖そう」「クルマで行くほどでもない、ちょっとした買い物に便利そう」などと賛否両論。昨今、電動モビリティの事故や違反がたびたびニュースで取り上げられることもあり、特定小型原付に対しても、マイナスの意見として、混合交通を不安視する声、免許を持たなくても運転できるのでルール遵守に疑問を持つ声、公道走行不可モデルでの走行を危惧する声などが挙がっていた。

そのような中、国土交通省は特定小型原付の保安基準を整備し保安基準への適合性をチェックする『性能等確認制度』を創設。また、適合性が確認された製品の型式は公表されており、国交省のWEBサイトで見ることができる(7月10日現在、6月12日のリストが公開されている)。執筆時点では、保安基準適合性が確認されているのは、4メーカーの製品(9車種・シェアリングサービス含む)。

まだまだ数は少ないが、国交省によると「確認中の車両もあるので、適合性が確認できたらリストは随時更新していく予定です」とのこと。また、適合性が確認された製品に対しては、『性能等確認済シール』が貼られており、シールの有無によって適正な製品であることが確認できるようになっている。

年齢確認や交通ルールのテスト実施など販売店の守るべきガイドラインが策定される

年齢確認や交通ルールのテスト実施など販売店の守るべきガイドラインが策定される
年齢確認や交通ルールのテスト実施など販売店の守るべきガイドラインが策定される

特定小型原付は新しい車両区分。しかも、16歳以上なら免許なしでも乗れる。つまり、免許取得者のように教習所などで交通ルールを学ぶ、ということが一切ない人でも乗ることが出来てしまうのだ。このことから、国交省や警察庁などの関係省庁では、特定小型原付の周知や啓発を目的としてリーフレットを発行しネット上でも情報公開している。

その他、警察庁では特定小型原付に関わる事業者に向けてガイドラインを策定し、警察庁の特定小型原付関連ページで公開している。この中には販売事業者が取り組むべき交通安全対策も盛り込まれている。これは、すでに特定小型原付の販売を手掛けている販売店や今後、新商材として特定小型原付の販売を考えている販売店が特定小型原付メーカーのディーラーとなった時、店が購入者に対して行うべきポイントをまとめたものだ。

いくつか例を挙げると、「交通ルール等の周知」「年齢確認の徹底」「保安基準に適合した車両の販売」「自賠責保険等の加入対策の実施」などが項目として公開されている。

この中の「交通ルール等の周知」については、購入者に対して交通ルールの理解度を測るテストの実施もしくは交通ルールの理解促進のための動画を視聴させなければならない。そしてテストを受けた者、動画を視聴した者以外が製品を購入することができないようにしなければならないと定められている。これは、店頭販売に限らず、ネットでの販売も同様だ。この規定があるため、一部のECサイトでは電動キックボードの出品を見合わせたところもあるという。

免許を必要としない特定小型原付は、16歳以上であれば手軽・気軽に誰でも乗れるモビリティ。だからこそ、安全で円滑な走行のために厳しい決まりごとがあるのは、仕方のないことだと言える。ただ、便利な乗り物であることは間違いない。国交省の性能等確認制度で保安基準適合性が確認された製品を販売する4メーカーのうち、販売代理店を募集している2メーカーと製品を以下に紹介しておくので、興味のある販売店は要チェック。

リリースされた特定小型原付(7月10日現在)

リリースされた特定小型原付(7月10日現在)
リリースされた特定小型原付(7月10日現在)

SWALLOW合同会社『ZERO9 Lite』

最高速度6km/hの歩道走行機能を搭載しない特定小型原付専用モデル。『ZERO9 Lite』は国内で最終組み立てをしており、EV専門の技術スタッフが全台検査を行っている。重量は18.5kgで最大負荷は100kg。航続距離は最大30km。サイズは長さ1130mm・幅595mm・高さ900mm~1130mm(可変式)だが、折りたたむことが可能で、折りたたみ時のサイズは長さ1130mm・幅200mm・高さ390mmとなるため、クルマに積んだり、持ち運んだりすることも容易だ。また、スワロウには足元に収納スペースを備えた電動モビリティ『Fiido(フィード)』があるのだが、もともと最高速度が19km/hなので、年内には特定小型原付モデルとして発売予定。

●販売代理店の要件
販売のガイドラインを守れることが大前提。ほかの要件は以下の通り。
1/店舗での修理・メンテナンスが可能であること
2/店舗での車体展示、試乗を行えること
3/誠実な対応ができること
その他については要問合せ。
●メーカー希望小売価格:13万9800円(税込)
●問い合わせ先:SWALLOW合同会社ホームページ/https://swallow-scooter.com/


長谷川工業株式会社YADEA『KS6 PRO』

YADEA(ヤディア)は2001年に創業した中国の電動モビリティ企業で、世界90か国において販売した電動モビリティの累計台数は7000万台以上を誇る。長谷川工業は日本における正規販売店。日本仕様モデルの『KS6 PRO』は、特例特定小型原付にも対応した2つの走行モードを備えるほか、回生ブレーキを搭載した省エネルギーで環境に優しい電動キックボード。定格出力500Wとパワフルで、坂道の多い場所でもらくらく走行できる。スピードの遅い特定小型原付は、ともすれば「非力」と思われがちだが、そのイメージを良い意味で裏切る1台だ。

●販売代理店の要件
販売のガイドラインを守れることが大前提。その他の要件については要問合せ。
●メーカー希望小売価格:19万8000円(税込)
●問い合わせ先:長谷川工業株式会社ホームページ/https://www.hasegawa-kogyo.co.jp/

試乗体験記

試乗体験記
試乗体験記

20km/hは、想像していたよりも速い。実際に見て乗ってみて、いろいろと印象が変わりました。

・ ・ ・ ・ ・


7月1日の特定小型原付販売開始に合わせ、6月29日、7月1日・2日・3日、東京都や神奈川県で試乗会が開催された。取材に伺ったのは7月1日、場所は東京都新宿区の『ビックカメラ新宿東口店』。試乗車として用意されていたのは、スワロウの『ZERO09 Lite』『Fiido』、ヤディアの『KS6 PRO』の3車種。試乗に訪れた50代男性に特定小型原付モデルに乗った感想を聞いた。

「実際の道路だとどう感じるのかは分かりませんが、20km/hは想像していたよりも速かったですね。全車種に乗りましたが、電動キックボードタイプは、スケートボードほどのサイズかと思っていましたが、割と大きく、私の身長(174cm)でもゆったりと乗れました。実際に見て乗ってみると、いろいろと印象が変わるものですね。試しに乗ってみようと思ってきてみましたが、購入を少し検討してみたいと思います」



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